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2023.12.20

岡山市の新アリーナ構想を検証 145億は誰が負担?県と市がすれ違う理由【急上昇ニュース】

関心の高い話題を詳しく解説する「急上昇ニュース」です。今回は、岡山県と岡山市が対立している新アリーナ問題を取り上げます。担当は堀さんです。

今、問題になっているのは、総事業費145億円といわれる新アリーナの建設費用をだれが負担するか?です。そこには岡山ならではの事情も絡んでいます。

実は今、各地で新アリーナの計画が進んでいます。このうち、高松は既存の体育館の建て替えです。また、神戸は民間企業がお金を出して建設します。一方岡山は、自治体が税金を使って作ります。建て替えではなく、新たに作るという点がポイントです。巨額な費用がかかるビッグプロジェクトだけに、将来にツケを残す訳にはいきません。

新しいアリーナの建設は、バレーボールの岡山シーガルズやバスケットボールのトライフープ岡山などが求めてきました。既存のジップアリーナ岡山だけでは足りていないことや、今後のトップリーグ参入条件に、巨大アリーナが必要なことなどを挙げています。

当初は、市役所の建て替えにあわせ、その隣に民間が建てる計画もありましたが、用地や費用の問題から現実的には難しく、岡山市は、経済団体の提案を受け、JR北長瀬駅の近くに公設民営で建設する案を発表しました。

「岡山ドームの道路を挟んで東側にある空き地。市営住宅の跡地がアリーナの予定地です」

新しいアリーナは、5000人以上を収容し、総事業費は約145億円と試算されています。

岡山市は、アリーナ建設の経済効果が市外にも及ぶとして、費用の一部の負担を県に要請しました。

(岡山市 大森雅夫市長 11月30日)
「市のみではなく、県全体で取り組むことが肝要」

岡山市のこの提案に対し、県が反発しました。

(岡山県 伊原木隆太知事 12月15日)
「突然費用負担を求められ困惑している。県の協力がなければ動かないと言われることがわからない」

県と市の対立は、約1年に及んでいます。

全国では、民間が出資するアリーナが続々と建設されています。神戸市では、NTTのグループ会社が1万人収容のアリーナを再来年オープンします。岡山で民間のアリーナは難しいのでしょうか?

(岡山市市民生活局 岩田修局次長)
「手を挙げてくれる所が岡山にはないのが現実」

それでも市が計画を進めるのは、トップスポーツチームの火を消してはいけないという思いがあるからです。

(岡山市市民生活局 岩田修局次長)
「箱を作ってあげるからこっちに来い、というのもちょくちょくある。誘いが来たら、よそに行かれる可能性も無いことはない」

これに対し県は、トップチームの支援だけならアリーナ建設の費用を負担できない、というスタンスです。

(岡山県 久山順一文化スポーツ振興監)

「(岡山市は)プロスポーツを第一に考えているが、県が関与を求められるのであれば、県民の利用がどうなるのかが大前提」

岡山県は2005年の岡山国体にあわせて35億円をかけてジップアリーナ岡山を整備しました。

「最大5000人が収容できるジップアリーナ岡山ですが18年間コンサートが行われた事は殆どありません。一方で、バスケやバレーのコートは4面取れ、スポーツに適した施設と言えます」

ジップアリーナの建設当時と違い、現在は、スポーツ以外の興行も積極的に行う「稼げるアリーナ」が求められています。

岡山市は、新アリーナの運営を民間に委託する計画ですが、維持管理にかかるのは、年間1億5000万円。それを黒字化するには、ジップアリーナの1.5倍の利用料金を設定し、スポーツ以外のイベントを年間32日以上開催する事が必要といいます。ジップアリーナでの昨年度のスポーツ以外の有料イベントはわずか一件。高いハードルにも感じます。

(岡山市市民生活局 岩田修局次長)
「収入になるものをかなり入れないとペイできない」

“稼ぐこと”と“県民市民利用”の両立という難しいバランスを迫られます。

また、新アリーナを成功させるには、JR北長瀬駅周辺のにぎわい作りも欠かせません。2019年にオープンした複合商業施設、ブランチ岡山北長瀬はアリーナへの導線にあり、より一層の活性化が期待されます。

また、その先にある岡山ドームは、現在、公共のイベントが多いものの、アリーナが出来れば、新たな活用方法が生まれるのではと期待する声もあります。

(岡山ドームの指定管理者は…)
「複数のイベントが同時開催することで、相乗効果による集客も考えられるかなと思う」

エリア一帯で数千人を受け入れる体制ができているかどうかかも、アリーナ計画の大事な視点です。

隣の広島県にある広島グリーンアリーナのキャパは1万人。スポーツの振興を目的としているため、コンサートの利用は年間10%までと決めていて、断ることもあるそうです。県の担当者によると、ニーズが十分に満たせていないので、「岡山に流れる可能性は十分にある」という事でした。

新アリーナは、税金を使う事を前提としている以上、「稼げるアリーナ」と「公共施設」のバランスをよく考え、徹底した議論をすることが必要と感じます。