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「あんなに心拍数が上がることはなかった」菅井竜也八段 藤井聡太七冠との叡王戦を振り返る【岡山】

2023.06.21

「あんなに心拍数が上がることはなかった」菅井竜也八段 藤井聡太七冠との叡王戦を振り返る【岡山】

将棋の叡王戦で藤井聡太七冠に挑み、善戦したものの1勝3敗で敗れた挑戦者、岡山市出身の菅井竜也八段。激闘を振り返り、今後の意気込みを語りました。

Q、6月22日にA級の順位戦初戦を迎えます。今のモチベーションはいかがですか?

順位戦が始まるということで、気持ちを入れ替えて順位戦に向けて精一杯頑張っていこうという気持ちです。A級は厳しいところだと思いますので、準備しないといい勝負にできない。自分が一番良い状態で行って勝敗がどうなるかというのがA級。

Q、叡王戦に挑んだこの春を振り返っていかがですか?

数年ぶりのタイトル戦だったんですけど、決まってからからあっという間に1、2、3ヵ月ぐらい過ぎて、早かったなと。結果は残念でしたけど、それを良い経験に変えて、また順位戦や違う棋戦でも頑張っていきたいです。

やっぱり数年間大きな勝負から離れていたので、そこでしか経験できないことは多いと思いました。次のタイトル戦まであまり間が空いてしまうと経験が無駄になってしまうので、なかなか難しいんですけど、良いテンポで大きな勝負をやっていきたいと思っています。

Q、藤井聡太叡王と戦った感想を改めて教えてください。

想像通りというか、王道の将棋を指す相手だなと思いました。その一方で、自分の将棋も十分、勝負できるんだなっていう手ごたえもありました。

Q、シリーズを通じてファンの応援はどう感じていましたか?

始めは「藤井聡太さんとやって、自分の応援をする人はいるのかな?」とか、そんな感じでしたけど、始まってみると、現地まで来てくださる方もものすごくいて、ニュース見たよとか、色んなところで反響がありました。それはやっぱりうれしかったですね。ただ結果が大事な世界です、はい。

Q、戦前は「最高の居飛車」と「最高の振り飛車」の戦いにしたいと話していました。それは表現できましたか?

全くですね。シリーズが終わるときにその状態に持っていけたらいいな、と思ってそう言ったんですけど、結果が出なかったので。もっともっと工夫して、また自分の力を高めていかないといけないなと思いました。

Q、シリーズを通じてポイントはどこでしたか?

それは毎日考えるんですけど、やっぱり3局目、4局目ですかね。すごく優勢な場面が2局続いたんですけど、そこで勝ちきれなかったというのは結構痛かったですね。

なんというか、そこは大きな勝負から離れすぎていたのがあったのかな、と思っていて。終盤であんなに慌てるかなという。対局していてあんなに心拍数が上がるのって最近なかったので、そこで冷静になれなかったですね。終わってみたら自分の敗因や敗着もわかるので、冷静さがなかったです。

やっぱりタイトル戦となると、いくらイメージしていても、その場所に行かないと得られないものがあるので。気持ちの入り方もあるし、結果を残したいとか、良い将棋を指したいとか、勝ちたいっていう気持ちが強くなっていけばいくほど、焦りにつながったんじゃないかと思いましたね。もちろん良い部分もありますけど。なので、大きな勝負の期間はあまり長く開けないように頑張らないといけないと思っています。

Q、感じた手応えについてはいかがでしょう。

将棋の戦法の話になりますけど、自分は振り飛車を得意にしていますが、今の時代ではそれは通用しない作戦とされています。まして藤井聡太さんとやるということで。

1局指してみたら、何となくそのシリーズの流れがわかるなと思っていました。「もしかしたら全く通用しないかもしれない」とも思っていました。ただ1局目、客観的に見たら完敗なんですけど、自分としては負け方がそれほど悪くなくて、「これは十分勝負できる」という手ごたえを感じられたので、その点は良かったですね。「自分の将棋はどういう相手とやっても通じる」というのが分かりました。

Q、ではシリーズを終えて感じたのはどんなことでしょう?

勝負なんで、絶対勝たないといけないという風に思ってましたから、4局目が終わってシリーズが終わってしまって、数年味わったことがないような気持ちになりましたね。落ち込むとか悲しいとか、そういう感覚ではなくて、普通の喜怒哀楽ではないというか。「自分はどうなるんだろうか」という感覚でした。

それでも、「また頑張ってください」と声をかけてもらったり、色んな手紙をいただいたり、メッセージをもらって、頑張らなきゃなと思いました。今はちょうど順位戦が始まりますし、そこに向けて頑張ります。

Q、次の目標は?

やっぱりタイトル挑戦、獲得ですね。そうしないとせっかくの数年ぶりの挑戦の経験が無駄になってしまうので、スパンを開けないことが大事だと思っています。

自分の個性を出して、将棋ファンの方に「将棋ってすごいな、おもしろいな」っていうのを感じてもらいたいですね。あとやっぱり地元(岡山)の方には、地元に将棋強いやつがいるんだぞっていうのを、将棋を知らない人にも知ってもらいたいというのがあるので、頑張っていきたいなと思っています。