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2023.05.31

【記者解説】ファジアーノ“新スタジアム構想” 先進地視察を経て…クラブが議論すべきポイント【岡山】

サッカーJ2、ファジアーノ岡山が新スタジアムの整備に向け動いています。背景や課題、そして先進地の例から今後の議論のポイントを探ります。

5月27日、ファジアーノ岡山の北川真也社長が訪れたのは、京都府亀岡市にある府立京都スタジアム、通称「サンガスタジアム」です。岡山商工会議所でスポーツ施設を中心としたまちづくりを検討する委員会のメンバーを視察に招待しました。

(視察した委員は…)
「屋根があるから音の反響が違う」

(ファジアーノ岡山 北川真也社長)
「ピッチと客席が近い。良いですね」

(視察した委員は…)
「選手たちがぶつかる音が聞こえて、迫力ありそう」

サンガスタジアムは京都府内で唯一のサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムで、J1・京都サンガのホームスタジアムとして2020年に完成しました。

(篠原聖記者)
「陸上トラックがない分、観客席との距離が近く迫力のある試合が楽しめそう」

入場可能な観客数は約2万2000人で、ファジアーノが建設を目指す新しいスタジアムとほぼ同じ規模です。

(京都サンガFC経営企画室 小川雅洋室長(元ファジアーノ岡山常務))
「岡山にずっといたので 盛り上がりは知っている。2万5000人のスタジアムができて J1に上がったら、半分の試合は2万人を超えると思う」

ファジアーノのホームスタジアム、シティライトスタジアムの入場可能な観客数は1万6500人。J1の基準は満たしているもののJ1のほとんどのクラブが2万人以上の球技専用スタジアムをホームとしていて、J1昇格を目指すファジアーノに対して、Jリーグは「改善が望ましい」と指摘しています。

(岡山商工会議所 スマート・ベニュー構想実現委員会 延原正浩委員長)
「週末はプロチームでにぎわいが創出できるような工夫を、知恵を出し合い考えていく。もう1段上にあがって、地元を盛り上げていければ」

(ファジアーノ岡山 北川真也社長)
「まずは多くの人に理解をもらうところからスタートさせていって、岡山という町にフットボールスタジアムが必要だと議論を起こしていきたい」

委員会は他のJ1クラブのスタジアムも視察し、岡山での新設に向けて検討するということです

(キャスター)
「ここからは視察に同行した篠原記者とお伝えします。クラブ悲願のJ1昇格、そして、将来的に継続してJ1で戦うためにも新スタジアム構想は議論すべき時に来ているんでしょうか?」

(篠原聖記者)
「はい、J1のスタジアムに求められる要素としてこちらの3つが挙げられます。2万人以上の観客が入場可能か。サッカーやラグビーなどの球技専用か。観客席の多くが屋根に覆われているか。ファジアーノによりますと今、J1に昇格した場合にこの3つ全てが当てはまっていないのは西日本では岡山のみです。また、広島や長崎など全国でスタジアムの建設や改修が進められていて、スタジアムに関してはJ1の水準から大きく水をあけられているのが現状と言えそうです」

(キャスター)
「新設を検討した場合どのくらいの費用がかかるのでしょうか?」

(篠原聖記者)
「ファジアーノの試算では、日本代表戦などの国際試合が行える2万5000人規模のスタジアムでは約200億円とかかるとされています。サンガスタジアムや全国の例を見てもクラブ単独で負担するのは難しく、自治体や経済界、市民からの支援が不可欠です。岡山県の伊原木知事は4月の定例会見で宝の持ち腐れにはならないとスタジアムの建設に一定の理解を示しながら議論が必要だと述べました。こうした中、今回視察したサンガスタジアムのある亀岡市の取り組みがモデルケースとして注目されています」

京都市の西隣に位置し、ベッドタウンとして発展してきた亀岡市。

(篠原聖記者)
「スタジアムは駅にほぼ直結していて、駅前はスタジアムを中心にマンションやホテルが相次いで建設され、都市開発が進められている」

市は2022年度、まるごとスタジアム構想と題してスポーツ中心のまちづくりが進められています。サンガスタジアムはプロジェクトの核に据えられていて、グラウンドだけでなく国際大会が開催できるスポーツクライミングの施設や本格的なフィットネスジム、子供たちが木のおもちゃなどで遊ぶことができる屋内型の遊び場や保育園が併設されていて、試合がなくても毎日活用できるような仕掛けづくりが行われています。多用な世代が交流でき地域活性化を図るスポーツ施設として、経産省が指定するモデルケースにも選定されました。

(京都市内から…)
「けっこう遊びに来ている。(Q:試合があるから?)全然関係なく、水遊びができるので遊びに来た」

(亀岡市民は…)
「子供の遊び場が増えて子育てがしやすくなった」

(亀岡市内の飲食店)
「だいぶ変わった。スタジアムできた当初はコロナ禍で少なく、去年からは観客が入っているのでにぎわいがある」

完成から3年、亀岡市の桂川市長も波及効果を実感しています。

(亀岡市 桂川孝裕市長)
「スタジアムがあったことで成人式が行えたり、運動会や文化発表会などいろいろな使い方を市民に提案してもらい、それを行政が応援するという取り組みを進めている。まちが大きくかわり市民マインドも変わってきた」

亀岡市とまちの規模は違いますが、競技だけでなく市民の日常生活でどれだけ活用されるか、そういったまちづくりの視点から建設されたスタジアムこそ目指すべき新しいスタジアムの姿と言えそうです。そのメリットを最大限活用するためにも現在、岡山県と岡山市が協議している新しいアリーナの構想と同様にしっかりと議論を重ねていく必要があります。