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2023.04.11

「誰もが楽しめるアート展」ユニバーサル・ミュージアムの魅力【手話が語る福祉 岡山・香川】

手話が語る福祉のコーナーです。“ユニバーサル”誰もが楽しめることをテーマにしたアート展が、岡山市で開催されています。この展覧会には、様々な人の思いが込められています。

(篠田吉央キャスター)
「ホールの中にたくさんの作品が並んでいます。実はこれ“見て”楽しむのではなく。このように明かりを消して、薄暗い状態で作品を“触って”楽しむユニバーサル・ミュージアムなんです」

大相撲、大関・魁皇のブロンズ像は…

(篠田吉央キャスター)
「触ってみると、作品というより、冷たい。素材に意識が行きます。そして頭。まげがあることで関取ということが伝わってきます。普通、アートというと正面から眺めることが多いですが、後ろからも触ることができます。胸板が厚いですね。そして太い首。作品の力強さが伝わってきます」

一方、天井から約1300本の布が吊り下げられた作品。

(篠田吉央キャスター)
「かき分けながら作品の中に入って行くんです。布はナイロンです。顔や腕、お腹を軽くなでられているような感覚になります。全身の感覚が研ぎ澄まされているような気がします。カサカサという音も心地良いです。全身を包み込まれているようで、方向感覚がわからなくなります」

岡山市で開催されている「ユニバーサル・ミュージアム さわる!”触”の大博覧会」。全国から集められた約170の作品、全てに触ることができます。

(体験した子供は…)
「(作品を触りながら)楽しい。ゴツゴツしていたり、世界にはこんな触り心地があるんだと思った」

(岡山県視覚障害者協会 竹内昌彦副会長)
「(ネコの作品を触って)耳があって、口、顔があって、足があって、しっぽがあって。ちょっとネコにしては太り気味だね。我々(視覚障害者)は、いつもこういう形で全体を見ている。みなさんのように目で見る時は正面から見るでしょうけど」

実は、この展覧会を監修したのも、視覚に障害がある男性です。

(篠田吉央キャスター)
「こんにちは、広瀬さん。岡山放送の篠田です。よろしくお願いします」

広瀬浩二郎さん。接触、触ることを通じ文化を理解しようという、触文化論を専門にしています。

(国立民族学博物館 広瀬浩二郎 教授)
「目というのはすごく便利で、情報を得たり伝えるのが早いが、人間はせっかくいろんな感覚をもっているので、もっといろんな感覚をのびのび使ったら、発見もあるし気づきもある。目が見えている人たちにこそ、触という世界を伝えたい」

広瀬さんのこの思いを表現したのが、今回の展覧会です。

(国立民族学博物館 広瀬浩二郎 教授)
「(岡山は)点字ブロック発祥の地ですし、関西から広がっていく意味では岡山をまずステップにできるのは非常にありがたい。岡山から全国を目指したい」

(篠田吉央キャスター)
「まもなく開幕ということで会場では準備が進んでいます。さまざまな解説パネルが用意されたり、奥では(作品の)笛吹ボトルをスタッフの方が並べてくださっています。」

(国立民族学博物館 広瀬浩二郎 教授)
「大きい点字ですね。(点字を読んで)ユ、ニ、バですね。点字は視覚障害者用の文字だが、デザインとして見てもすごく美しい。点字って面白そうだなと感じてくれる人が増えるといいなと思います」

会場の準備は、聴覚障害者と、アートを学ぶ大学生が協力しました。

(聴覚障害者)
「“ありがとう”という手話を覚えて・よろしく!!」
(大学生)
「ありがとう」

さらに、点字ブロックの設置には視覚障害者も参加しました。

(岡山県視覚障害者協会 竹内昌彦副会長)
「この方向は歩いでも安全ですよ。この方向なら行きなさい。そういう意味で(線が並んだんものを)誘導ブロックという。これは警告ブロックや点状ブロックといって、点々を踏んだら、一度立ち止まる」

この点字ブロックは地元のホテルがスポンサーとなり、設置されました。障害者支援の新しい形です。

(篠田吉央キャスター)
「この点字ブロックが、あるものに姿を変えました。それが“点字ブロッククッキー”です。見た目はそのままミニチュア版。クッキーの甘いにおいの中に、レモンのさわやかな香りがします。(試食して)唇や舌で点字を感じます。食感を楽しむ。口の中で“止まれ”と“進め”を感じてください」

このほかに、古墳の作品にちなんだキャンディーも。

(篠田吉央キャスター)
「口のいろんな部分を刺激する感じがあります。(古墳キャンディーに)舌をはわせてみると、前方後円墳の丸い部分や角ばった部分も感じて、不思議な感じがします」

触るという、今までにない鑑賞方法は、障害の有無に関わらず多くの人を魅了します。

(篠田吉央キャスター)
「作品に触ることで様々な共感が得られるユニバーサル・ミュージアム。是非、関わった人の思いに触れてみてください」

この展覧会は5月7日まで開催しています。