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夢追って岡山へ 震災移住者が育てたメロン 流通量の少ない希少な品種に挑む【岡山・倉敷市】

2021.06.16

夢追って岡山へ 震災移住者が育てたメロン 流通量の少ない希少な品種に挑む【岡山・倉敷市】

倉敷市の農園で、希少な品種のメロンの収穫が始まりました。

育てるのは東日本大震災で被災し岡山に移住した男性。

その経験をもとにしたこだわりの農法で、販路拡大を目指しています。

(高木俊治さん)
「1玉1玉個性が違うんで、名前は付けてないけど、きょうはどう?みたいに話しかけて作業してます」

楽しみにしている収穫の時期が、今年もやってきました。

倉敷市矢部にあるハウス3棟の小さな農園。栽培が難しいとされ、流通量の少ない「ゆうか」という品種のメロンを育てているのが、高木俊治さんです。

(高木俊治さん)
「うまくお嫁に行ってもらえたら」
Q「娘を出すような気持ち?」「そうですね」

岡山でメロン農家となったのは5年前。しかし、それは本来、別の場所で実現するはずでした。

(高木俊治さん)
「いろんなことがあって、ゼロからのスタートで、よくここまでできたなと」

東京出身で、都内でサラリーマンをしていた高木さんは、会社が吸収合併されたことを機に退職。手に職をつけようと、茨城県にある農業の専門学校で学ぶうち、メロンに魅せられました。

卒業後、自立を目指して移ったのが福島県猪苗代町でしたが、引っ越しのまさにその日、あの未曾有の災害に見舞われたのです。

(東日本大震災が発生)
東日本大震災と、福島第一原発の事故です。放射線の影響を避けようと東京の実家に避難した高木さんでしたが、メロンづくりを諦めきれず、土地を探すため全国を回りました。

縁があったのが当時、移住者の受け入れに積極的で、各地の原発から離れている岡山でした。

(高木俊治さん)
「次が起きるんではないかと想像して、そうなった時に悔いが無いように生きたいと思うようになった」

原発事故を経験し、一層強まった「安全」への意識。メロンの栽培には可能な限り農薬や化学肥料を使いません。

(高木俊治さん)
「落ち葉にもみ殻に米ぬか。これが、メインの肥料。(化学肥料を)入れないでメロン本来の力で頑張る」

メロンの評判は口コミで広がり、年々、注文も増えてきました。2021年中にはもう一棟ハウスを増やし、ゆくゆくは観光農園を開く夢も持っています。

(高木俊治さん)
「今までやってきたことが形になってきたから、本来の自分。これではまだ終わりではない。良い方向へもう一段階進みたい」

震災から10年。災害に翻弄されたかつての経験を糧に、高木さんはここ、岡山で一歩ずつ前へと進んでいます。