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2023.11.01

なぜ失踪?外国人技能実習生 背景に「日本語教育」の問題も…サポート体制が急務【急上昇ニュース岡山】

ネットで関心を集めた話題などを詳しく解説する「急上昇ニュース」です。今回は様々な問題から制度の見直しが検討されている「外国人技能実習制度」について深掘りします。担当は堀さんです。

9006人。これは2022年に失踪した外国人技能実習生の数です。なぜこうした問題が起きるのでしょうか?

(フィリピンからの技能実習生)
「ハンマーを投げられた」
「『お前馬鹿か』(と言われた)」
「わき腹をパンチ(された)」
実習生1
彼らはフィリピンからやってきた技能実習生です。建設現場で働いていましたが、職場で様々なハラスメントを受け、逃げ出しました。現在は広島県福山市にある労働組合のシェルターにかくまわれています。

技能実習制度の在り方は、世界的に問題点が指摘されています。
実習生2
(福山ユニオンたんぽぽ 武藤貢執行委員長)
「『奴隷労働』と批判されている。人権が保障されていない。家族が帯同できない。転職の自由がない」
実習生3
虐待、低賃金、不法滞在の温床などと度々問題になる外国人技能実習制度。一方で、多くの実習生を支援してきた武藤さんは、実習生自身の能力にも原因を感じています。

(福山ユニオンたんぽぽ 武藤貢執行委員長)
「スキルは正直言って低い。にわか勉強で来て、どうやっていいかわからない。途方に暮れる。それで怒られる。嫌になっちゃう」

特に大きいのは、言葉の問題です。
実習生4
岡山市の岡山外語学院では、多くの外国人が夢を叶えようと日本語を学んでいます。

(ベトナムからの留学生)
「教育に関わる仕事がしたい。教師になりたい」

日本語能力試験には5つのレベルがあり、難易度の高い試験に合格すれば、通訳やエンジニアなど、仕事の幅が広がります。

卒業生の1人、ベトナム人のキエウ クアン ズンさん(23)は、その後専門学校で自動車整備を学び、2024年春から、岡山市内の中古車販売会社で整備士として働くことが決まっています。
実習生5
(キエウ クアン ズンさん)
「将来はベトナムに帰って自分の店を作りたい」

日本語学校に通い、十分な知識を得てから社会に出る外国人がいる一方、技能実習生の中には、ほとんど日本語がしゃべれないまま、現場に出る人が少なくありません。
実習生6
(岡山外語学院 大坪茉莉子さん)
「現地で日本語の勉強はしているが、来日後に日本語を専門家に学ぶ環境が出来ればいいと思う」

色々な外国人の姿がありますが、そもそも在留資格は人によって違います。
実習生7
岡山県内には3万2000人の在留外国人がいて、最も多いのが技能実習生の24%です。留学生は12%です。

なぜ技能実習生が多いのでしょうか?一つの理由は、「日本人労働者が集まりにくい地方や中小零細企業で“人手不足の解消”に使われている面があるため」です。

“人材育成”という技能実習制度の趣旨とは、かけ離れている現状。スキルが低い実習生も多く、日本語がしゃべれない事や、仕事の基礎知識がない事が、職場でのコミュニケーション不足、ハラスメントに繋がっている側面もあります。

そこで、実習生のスキルを上げようという、草の根の動きも起きています。

(オンラインで)「おはようございます。始めましょう」
実習生8
技能実習生にボランティアで日本語を教えている、ベトナム人のホアン ゴック ビック チャンさん(25)。岡山大学大学院に通う留学生です。

(オンラインの授業風景)
「見つかります」「そうそう素晴らしい。『鍵が見つかります』いいですね」

始めたきっかけは、逮捕されたベトナム人の接見通訳をしたことでした。

(ホアン ゴック ビック チャンさん)
「逮捕された人の多くは技能実習生だった。最初からよくない人間なのかと思っていたが、日本語が出来ず生活と仕事が苦しくなって相談する相手がいない人」

現在約40人に日本語を教えていて、生活相談にも乗っています。目指すのは、日本人と実習生、お互いが理解しあえる関係を作ることです。
実習生9
(ホアン ゴック ビック チャンさん)
「技能実習生は日本人との関りが少ないのが問題。日本人との対話の場を設けて、お互いが見える存在、関りを深くするようにしている」

日本に来てからこういうサポートがあれば、実習生の身を守ることにもつながります。

今進められている技能実習制度の見直しでは、「受け入れ企業が実習生を“育成する義務”を明確にすること」「一定の条件にあえば“転籍を認める”こと」などが検討されています。

必要とされるのは、単なる労働力としてみるのではなく、人としての対応です。

以上、急上昇ニュースでした。