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2025.06.19

戦時中の”虹波・人体実験”で新事実…ハンセン病療養所の医師が「効果はそれほどでもなかった」【岡山】

 

  太平洋戦争中に、旧陸軍が開発を進め戦後にかけてハンセン病療養所の患者に投与されていた薬・「虹波(こうは)」を巡って新たな事実が分かりました。瀬戸内市の長島愛生園の当時の医師が園の機関誌に、「効果はそれほどでもなかった」と投与の結果を書き記していました。

当時の医師は「(効果は)それ程でも無く患者間の評判は悪かった」と寄稿も…別の療養所入所者は「高熱が出て出血もした」と証言

  「愛生でも追試したが、(効果は)それ程でも無く患者間の評判は悪かった」

瀬戸内市のハンセン病療養所、長島愛生園の機関誌、「愛生」の1966年2月号に当時の医師が寄稿したものです。

熊本県のハンセン病療養所・菊池恵楓園の当時の園長がハンセン病の治療薬に「虹波」を応用したことを受け、長島愛生園でも試したと説明しています。

(長島愛生園 山本典良園長)
「やはりあったな、ということだけ。数人使って効果がなかったからやめたと。以降、使っていない認識」

高松市の大島青松園では入所者180人に虹波を使用した記録が残っています。

(大島青松園入所者 松本常二さん(93))
「高熱が出て出血もした。10日間ほどベッドで意識不明で寝ていた。恐ろしかったから言いなり」

旧陸軍が“機密事項”として進めた虹波の「人体実験」 学芸員が検証結果を報告

  太平洋戦争中に旧陸軍が、寒冷地での兵士の身体機能の増進を目的に開発したとされる薬・「虹波」。主な成分は写真フィルムの感光剤などに使われる感光色素です。

(竹下美保記者)
「虹波について熱心な検証作業が続いている熊本です。ここ熊本で開かれている市民学会で虹波がテーマにあげられ注目を集めています」

ハンセン病の元患者や研究者らが、毎年、ハンセン病の歴史の検証や将来への提言を行うハンセン病市民学会。5月、熊本市で開かれた交流集会では菊池恵楓園歴史資料館の学芸員が入所者に対して行われた虹波の人体実験の検証結果を報告しました。

(菊池恵楓園歴史資料館 原田寿真学芸員)
「満州などの寒冷地において、作戦を遂行する方法が検討されていた。赤外感光色素を体に取り込むことができれば周囲の赤外線を取り込むことで体表の温度が上昇するのではないか。にわかに信じられないが、そういったことが真面目に検討された」

当時の園長が進めた人体実験「最年少はわずか6歳の子供」

  旧陸軍の機密事項として当時の園長が進めた人体実験は、少なくとも入所者472人に対し行われ、最年少はわずか6歳の子供。激しい副作用があっても中止されることなく、9人が亡くなったことが明らかになりました。

(菊池恵楓園歴史資料館 原田寿真学芸員)
「国家が直接管理する施設であること、大量の被験者が用意可能であること、被験者が外に出る可能性が低いということ、こういった諸条件が秘密研究をするのに適していたとみられる」

旧陸軍が実験前から虹波の成分は「猛毒である」と認識していた可能性があるとの記録も

  当時の園長は、軍に「効果良好」と報告。この報告を受け、瀬戸内市の長島愛生園、高松市の大島青松園など他の療養所にも実験が広がりました。

(大島青松園入所者自治会 森和男会長)
「同じ病気を患っていた者としては怒りはある、日本の体質はなかなか改まらない」

旧陸軍は、実験前から虹波の成分は「猛毒である」と認識していた可能性があるという記録も確認されています。

(菊池恵楓園入所者自治会 太田明会長代行)
「菊池恵楓園を先行事例として、他の療養所でも検証作業を深め、進めてほしい。新たな発見が出てくると思う」

高松市の大島青松園では、30年より前のカルテなどの資料は残されていません。一方、瀬戸内市の長島愛生園には、ほぼ全員のカルテが残されているとみられています。

(長島愛生園 山本典良園長)
「(Q:カルテに書いてあるかどうかは分からないか?)それはぜひ調べたい。どの程度カルテに記載していたかは今後カルテを保管する意義においても大事」

未だ残るであろう課題…「らい予防法」撤廃からまもなく30年 高齢となった入所者に解決を待つ時間はない

  ハンセン病患者を隔離し、入所者を長く苦しめてきた法律「らい予防法」が撤廃されて2026年で30年を迎えます。国家賠償請求訴訟の原告側弁護団の共同代表で、市民学会を運営してきた徳田靖之弁護士は、この30年をこう振り返ります。

(ハンセン病訴訟西日本弁護団 共同代表 徳田靖之弁護士)
「歴史的に何があったのか、実はたくさんのことが闇に葬られてきて、後から後から出てくる状況。私はいくつかの問題を解決した20年、30年ではあったが、残された課題は深刻な形で残っていると思う」

残された課題・・・。高齢となった入所者には、解決を待つ時間は多くは残されていません。


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