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2023.12.21

長島愛生園入所者の「解剖録」群馬県の資料館で公開 過酷な療養生活の実態明らかに【岡山】

瀬戸内市のハンセン病療養所長島愛生園に残されていた入所者の解剖の記録が今、県外で展示されています。2022年、全国で初めて解剖録が公開されたことをきっかけにハンセン病について考える取り組みが広がっています。

多くのハンセン病患者も湯治に訪れていたと伝わる群馬県の草津温泉。この町の資料館で、企画展が行われています。

(竹下美保記者)
「長島愛生園の入所者木村仙太郎さんの解剖録などの資料が群馬県でも展示されています。約40枚のパネルで紹介されています」

23歳でハンセン病を発症し、愛媛県の自宅で過ごしていた木村仙太郎さん。53歳となった1939年、瀬戸内市の長島愛生園に強制収容されその2年後、肺結核で亡くなりました。

それから約80年がたった2022年9月、仙太郎さんの遺族で医学者の木村真三さんが、療養所に残る”解剖録”の開示を求め、一般公開することを申し出ました。

(入所者遺族 木村真三さん)
「黙ることで家族を守る時代ではなく、公開することできちんとした、今あった社会状況をみんなが考えてもらえるようにしないといけないと考えて公開に踏み切った」

愛生園の山本典良園長は申し出を受け入れ、園で展示することを決断。入所者の解剖録が一般公開されたのは全国で初めてのことで、今も偏見や差別が根強く残るハンセン病問題に一石を投じました。

(長島愛生園 山本典良園長)
「展示公開することで何か変わってほしいという希望・願望がある、最初一歩踏み出すことによっていろんな批判を当然受ける受けたうえで次の1歩目、次の2歩目をを考えて、どんどん前進する、進歩するんじゃないかという考え」

問題の解決に向けた取り組みが県外へと広がりを見せています。標高1000メートルを超え、冬は氷点下20度にも及ぶ草津町。かつてハンセン病患者の懲罰施設があった場所で、解剖録の複写が一般公開されています。

(竹下美保記者)
「資料館には重監房と呼ばれる特別病室が再現されています。全国の療養所で反抗的とされた患者が送られ重監房では23人が亡くなりました」

この施設には当時、療養所の運営に都合の悪い入所者が裁判も行われないまま、のべ93人が送り込まれました。1947年、ある新聞記者が群馬県の療養所で死者が続出したことをスクープしたことで、重監房の存在は大きな問題となり廃止されました。重監房の実態について未だに詳しいことは分かっていません。学芸員の黒尾和久さんは、重監房資料館で解剖録を展示する意義をこう話します。

(重監房資料館 黒尾和久学芸員)
「これだけのデータを開示していただいて資料館としても財産となった、過酷な療養生活・療養所の実態が浮かび上がってくるのではないか、それと並行に特別病室・重監房が用意されているわけですから、一つのお皿にのっけて考えていくことが大事」

木村仙太郎さんの解剖録やカルテなど6つの資料は大きく引き伸ばされ、解説を加えて展示されています。長島愛生園の展示の時には気が付かなかったことも見えてきたといいます。

(重監房資料館 黒尾和久学芸員)
「ずっと読んでいくとどうしても目が留まる褥瘡・床ずれ。30年間家で療養していた仙太郎さんには床ずれなんかない。2年間の病棟暮らしでこういう大きな床ずれができるくらいの2年間」
「栄養状態、治療らしい治療も受けられなかった」
「もしかするとらい予防法改正されなければ自宅で全うできた、もう少し長生きもできたのでは、(発病しても)30年間生きられたのでは」

一般公開をきっかけに、今後、解剖録の医学的な検証も行われることになりました。長く閉ざされた療養所で、何が行われてきたのか。”解剖録”はその解明に向けたカギとなります。