
2021.01.28
ミルクボランティアを知っていますか?殺処分数全国ワーストの香川で命をつなぐ取り組み【香川】
生まれたばかりのイヌやネコを預かって育てるミルクボランティアと呼ばれる活動をご存じでしょうか。殺処分数が全国ワーストの香川県で命をつなぐ取り組みが進んでいます。
ミルクを飲む姿が愛らしい子犬。生まれてから1週間もたたない小さな命です。世話をしているのは坂出市に住む吉田文香さん。吉田さんは、保健所に収容された離乳前のイヌやネコを2カ月間、預かって育てるミルクボランティアという活動をしています。現在は6匹の子犬を飼育中です。
(吉田文香さん)
「そりゃ可愛いですよ。可愛くないと育てられないみんな可愛い」
ミルクボランティアが育てたイヌやネコは、動物愛護センターや譲渡を行うボランティアを通して新たな里親の元へ行きます。
このミルクボランティアの制度は、県が3年前から始めたもので、背景にあるのが深刻な殺処分の状況です。
イヌの殺処分数は7年連続で全国最悪 特に離乳前はほとんどが…
香川県では2019年度、2219匹のイヌが保護され、そのうち約4割に当たる920匹が殺処分されました。イヌの殺処分数は7年連続で全国最悪です。
特に離乳前のイヌやネコは数時間おきに授乳する必要があるため保健所の負担が大きく、これまで、ほとんどが殺処分されていました。
(中讃保健福祉事務所 中村宗主任)
「(ミルクボランティアに)夜間・休日含め、きめ細やかなケアをしてもらうようになったことで、譲渡できるようになるまで(約2カ月)元気に育ち、殺処分せず新しい飼い主に譲渡できるようになった」
小さな命をつなぐこと。それがミルクボランティアの役割の1つですが、決して簡単なことではありません。
(吉田文香さん)
「普通なら生後2カ月までは母犬が育てる時期。それを人の手で育てようと思うと、それは大変。睡眠時間削って1日中ミルクやらないといけない」
吉田さんの手帳です。昼夜を問わず3時間おきにミルクを与え、飲んだミルクの量や体重に大きな変化がないか記録しています。
(吉田文香さん)
「命と直結している大事な時期なので、すごく気にしている」
吉田さんは、譲渡ボランティアの代表も務めていて、日中はボランティアが管理するシェルターでイヌやネコの世話をしていますが、片時も子犬たちから離れることはありません。
(吉田文香さん)
「1日中24時間離れることはない。私が移動する先にこの子たちを連れて行く。自分の時間は無い」
ミルクボランティア もう1つの大きな役割とは?
ミルクボランティアには、もう1つ、大きな役割があります。それがイヌやネコを人になれさせることです。
(小野修司記者)
「こちらの2匹のイヌは、生後3カ月ほどのときに、野犬だったところを保健所に収容された。近づこうとすると警戒しながら距離をとる。一方、こちらは、ミルクボランティアが育てたイヌ。近づいても全く離れようとはしない」
動物には、様々な環境に適応する社会期という期間があります。イヌやネコの場合生まれてから約3カ月間が社会期にあたり、この期間を過ぎると人になれさせるのは急激に難しくなり、せっかく保護しても譲渡することができず、多くは殺処分されてしまいます。
(吉田文香さん)
「逃げ回る(人なれしていない)と里親は見つかりにくい。しっかり愛情を注いで可愛がって、この子たちが人間と暮らしていくうえで、人なれさせるのがミルクボランティアの役割だと思っている」
こうした努力もあり、2019年度の県内の譲渡数はイヌ1189匹、ネコ512匹と前の年度に比べて約4割増えました。
しかし、保健所に収容される半数以上は離乳していて、社会期を超えているケースも少なくありません。そうした野良犬や野良猫を減らさなければ、殺処分をゼロにすることはできないのです。
(中讃保健福祉事務所 中村宗主任)
「無責任なエサやりは、飼い主のいないイヌやネコを維持してしまう。そういう動物を減らすためにも無責任なエサやりやめてほしい」
吉田さんは、この日、新しい里親のもとに向かいました。自分が育てたイヌを譲渡するためです。3年前からミルクボランティアを始め、これまでに引き取ったイヌとネコは約400匹。私生活を犠牲にしてまで続ける理由がこの瞬間にあります。
(吉田文香さん)
「全総力を注いで2カ月間、この日のために育ててきたので、1番うれしい瞬間。小さな命に明るい未来が待っていることが分かるから、すごいやりがいがあって楽しい。救える命を一つでも多く救っていくことで、殺処分減らしていきたい。」
