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2024.01.31

訪問サービスは「減額」…新年度の“介護報酬見直し”に問題点を指摘する声【急上昇ニュース岡山・香川】

今関心の高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースです。今回は介護業界の待遇を考えます。担当は堀さんです。

(報告 堀靖英)
介護職は、肉体的・心理的負担が大きい一方、収入が少ないといわれます。国は待遇を改善するため、2024年度の介護報酬を見直すと発表しました。これによって基本給2.5%のベースアップにつながるとしています。この見直し、評価する声がある一方、様々な問題点も指摘されています。

人手不足が深刻な介護の現場。2025年度には、全国で32万人の介護職員が不足すると言われています。こうした中、国は来年度介護事業所に支払う介護報酬を改定し、介護職の基本給、2.5%ベースアップを目指すとしています。

(岡山県立大保健福祉学部 岩満賢次教授)
「全体としてアップしているのはとても評価できる」

ところがこの改定、アップだけではありません。介護福祉士の古田幸枝さん(46)は、倉敷市の社会福祉法人で訪問介護の責任者を努めています。訪問介護は、利用者の家を一軒一軒訪問し、食事や入浴の介助、掃除や洗濯、買い物などをする仕事です。

(利用者は…)
「楽しみに待っているんですよ。だからヘルパーステーションが無くなったら困るんです」

地域で暮らす高齢者の支えとなっている訪問介護サービスですが、その介護報酬は2024年度、「減額」することが決まっています。理由について国は、「事業者の利益率が高いため」としています。

(庄の里ヘルパーステーション 古田幸枝さん)
「利益率が7%とか言うけど元々の介護報酬が低い」

訪問介護事業者の倒産は2023年、過去最多の60件ありました。岡山県立大学の岩満教授は、都市部と地方で事情が違うと言います。

(岡山県立大保健福祉学部 岩満賢次教授)
「訪問介護は特に都市部で企業の参入が多い。マンションなど高齢者が多いエリアで利益率が高い」

古田さんは、今後さらに人手不足になるのではと危惧しています。

(庄の里ヘルパーステーション 古田幸枝さん)
「介護報酬が下げられたことで、訪問介護が仕事として軽視される。余計に人が集まらなくなるのでは」

介護保険制度は、介護を社会全体で支える事を目的に、2000年に作られました。利用者は基本的に料金の1割を負担します。事業者に支払われる介護報酬は、職員やサービスの数などを増やすと、基準より加算される仕組みです。しかし、地方の多くの介護現場に余裕はありません。

(老人保健施設古都の森 久安由香里主任)
「人手は足りてないです。ゆったりと利用者さんにかけられる時間が取れないのが現状」

重度の認知症の高齢者を介護するこの施設。体力を使う入浴の介助や排せつ物の介助を行います。職員は40代から60代が中心で、なかなか若い人が入ってきません。数少ない20代の職員が弘中祐理菜さん(27)です。

(弘中祐理菜さん)
「利用者様からありがとうって言われたらすごく嬉しくて、やってよかったなとか思ったり」

人の役に立つ仕事がしたかったという弘中さん。こうした志を持つ若者にとって、収入の低さはネックです。介護職の年収は全産業の平均より約130万円低いというデータもあります。

(老人保健施設古都の森 久安由香里主任)
「給料面で国も考えてくれているが、もう少し上がれば介護してみようという人が増えるのでは」

日本全体で賃上げムードが広がるこの春。介護職の賃金の2.5%ベースアップは決して十分とは言えません。介護職の待遇を大幅に改善するには、今の制度の仕組みを変えることが必要だと、岩満教授は言います。

(岡山県立大保健福祉学部 岩満賢次教授)
「介護報酬の枠を増やせば利用者の負担も増えるので、事業者も一律に増やせと言えない。仕組みそのものに限界がある。給与だけは介護保険と切り離し税金などでケアすることが大事では」

今の介護保険制度では、利用者がサービス料金の1割を基本的に負担します。介護職の報酬が増えれば、利用者の負担が増えるジレンマがあります。これでは限界があるとして、岩満教授は税金の投入など、対策が必要と話していました。誰もがお世話になる可能性のある介護。世の賃上げの動きから取り残してはいけません。

以上、急上昇ニュースでした。