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2023.05.09

「潮に流され亡くなった人も…」 長年隔離されたハンセン病患者の“人間回復の橋” 開通35年【岡山】

2つの国立ハンセン病療養所がある瀬戸内市の長島と本土を結ぶ邑久長島大橋の開通から5月9日で35年です。長年、隔絶された島と社会をつないだ橋。元患者の思いを聞きました。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「閉じ込められていた時間が長すぎて35年あっという間だった。この橋が架かって以降、ひっきりなしに誰かが来てくれて、だんだん普通の生活ができるようになってきた」

長島愛生園入所者の中尾伸治さん(88)。「人間回復の橋」。そう呼ばれる橋がかかった35年前のことは鮮明に覚えています。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「やっと人権というものが自分たちの耳に届いた」

ハンセン病患者は強制的に隔離するという国の誤った政策のもと、長島にある長島愛生園と邑久光明園には多くの患者が収容されました。

橋が架かるまで行き来は船だけ。本土までの22メートルは、入所者にとって近くて遠い距離でした。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「家が心配で帰りたい人が海を渡ったが、潮に流され亡くなったという話も聞いた。この短い海峡が大海原のような感じ」

そんな海峡が橋で結ばれたのが1988年でした。

「この海によって隔離されてきたハンセン病患者にとって、まさに悲願がかなった日」

橋の開通から35年。現在2つの療養所の入所者は合わせて157人で、高齢化も進む中、中尾さんが伝えたいことは差別や偏見のない社会の実現です。

(長島愛生園入所者自治会 中尾伸治会長)
「この橋を使ってどんどん島に来てほしいし、島を利用してもらいたい。島の中での生活を見てほしい」

長島愛生園には年間約8000人が訪れるなど人々の往来を生んできた橋。これからも多くの交流を支えます。

(映像提供:長島愛生園)