OHK 8Ch

  • LINE友だち追加
「もう一回華やかになってほしい」古巣・湯郷ベルへの思いも…“異国で奮闘”本田美登里監督(後)【岡山】

2022.09.22

「もう一回華やかになってほしい」古巣・湯郷ベルへの思いも…“異国で奮闘”本田美登里監督(後)【岡山】

女子サッカーの発展途上国、中央アジアのウズベキスタンで、代表監督として奮闘中の岡山湯郷ベル初代監督・本田美登里さん(57)。ウズベキスタンの女子サッカーを取り巻く現在の環境は、昔の日本を思い出すといいます。話は、人気・成績とも低迷ぎみの日本の女子サッカー界の現状、古巣・岡山湯郷ベルへの思いにも及びました。
本田7
■女性がサッカーなんて

Q、ウズベキスタンの女子サッカーの現状は?
「日本の35年前くらいの状況が今、ウズベキスタン女子サッカー界にあって。いわゆる『女性がサッカーなんかやってどうするの?』という。ウズベキスタンって結婚適齢期が23歳とか24歳なんですよ。20歳で結婚する子はしてしまって。『25になってまだサッカーやっているの?』と家族が言う、彼氏が言う、周りが言う。でもサッカーが好きな子が少しずつ増えてきている状況。『頑張ってサッカーをするけど、結婚するからやめちゃう』という子がいる状況なんですね。それを少しずつクリアしていく。35年かける訳にはいかないので、何とか半分くらいのスパンで上げられたらいいなと思っているんですけど」
本田3
Q、昔の自分を思い出す?
「本当にそうですよ。『まだサッカーやっているの?』『えっ女子がサッカーやるの?』って。ウズベキスタンは、宗教的に女性は女性らしくあれ、男性は男性らしくあれというのが多分あって。なので『サッカーは男のスポーツ』という、日本でも何十年か前に言われていた状況が、今少しずつ変わりつつある。まさしくそんな状況。何十年前経験したなぁという」

Q、経験したからこそ見える?
「(自分が)やってきたことなので、単純に30年後の(ウズベキスタンの)女子サッカー界は明るいなと思うんですけど。でも30年はいられないので、何とか1、2年の間に、もう少し足早にやっていきたいなと思っています」
本田4
■世界に追いつけない日本

Q、日本の女子サッカーの現状については?
「比較的いい環境の中で女子もサッカーがやれて、(日本初の女子プロサッカーリーグ)WEリーグもできて。『だけどなんで世界に追いついてないのかな?追いつけないのかな?』と。追いついていなかったけど2011年はワールドカップで優勝できた。そこから10年経って環境が変わって恵まれた中で、『でもサッカースタイルってどうなのかな?指導者どうなんだろう?』って思うと、まだ外から見えている部分は少ないんですけど、違う所にフォーカスしないと、ヨーロッパについていけないんだろうなという事は感じます。環境を整えればいい、いい状況でサッカーができるようにしてあげればいい、プロを作ればいいっていうだけではない。その次は何?っていう所はまだ見つかっていないんですけど。まだ女子サッカーが文化になっていないし、当たり前に女子サッカーがやれる環境にはなったんですけど、それだけじゃない、まだまだ根深いものがあるんだろうなという部分は感じます」

Q、ドイツでは男子と日程をコラボして集客が増えたとも聞きます。
「スペインやイタリアでも女子サッカーですごく観客動員がある。だからよそをまねるのではなく、日本のオリジナルのやり方でそれをやらないと。JFA(日本サッカー協会)も一生懸命女子サッカーを盛り上げようとしてくれているとは思うんですけど、そこに日本オリジナルの男子とのコラボがないと、国民が振り向いてくれないだろうな、という感じはします。男子とコラボなのか…ほとんどテレビを見ていないんですけど、(テレビで活躍するような)アイドル化をするのがいいのか…女子サッカーのオリジナルのものが必要なのかなって」
本田8
■日本の女子サッカー界へ

Q、今後のウズベキスタンでの活動は?
「契約は2年なので、2023年の12月31日まで。ただ4月にオリンピック1次予選、9月に2次予選があって、そこに行けた時、行けなかった時、契約がそこで終わるのか、新しい監督に切り替えるのか、継続なのか、というのは、お互いの状況をみてですけどね」

Q、その先に日本に戻ることは?
「全然考えていないです。引退してもいいかな?くらいに思っています。青い海でのんびりしてもいいかなと(笑)。ただ本当にちょっと…閉塞感があるんだよな。ぱっとしないよね、日本の女子サッカー界」

Q、選手も世代交代し、世界一のブームは去りました。
「当然世代交代はしなきゃいけない。それは選手もそうだし、スタッフとか、もしかしたらJFAの世代交代も含めて、今の時代にあった組織になっていくのも必要かなと。我々(の世代)には理解できない、今の若者たちのものが必要かなとも思う」

■低迷する岡山湯郷ベルへ

Q、最近の湯郷ベルは?
「(直前まで指導した)静岡SSUボニータがなでしこリーグ2部にいるので試合もちょっと見ていますし、(当時のチームメイトなどから)話も聞いたりはしているので」
本田9
Q、今苦戦していますが?
「自分が作ったチームなのですごく気になるし、もう一回賑やかに華やかになってほしい思いはある。じゃないと何となく自分が作って、作り逃げしたような気がして。でも美作に、岡山に住民票がある人はずっとここで暮らしていくわけだから、その人たちにとって悲しい、残念なチームとして残ったらすごく嫌だなという思いがあるので、もう一回ここで息を吹き返してほしいなとという思いがあります」

Q、今後、湯郷ベルに関わることは?
「(笑)ただ、私がここをやめる時に言い残していったのは、『ファジアーノとくっついた方がいい』と。美作独自じゃなくて、岡山として考えたら。もう一回関われるとするならそういう形とかいろんな形で、皆にとって幸せな状況を作り出したいなとは思いますけどね」

Q、男子とのコラボ?
「女子サッカー、美作だけでは今の時代苦しいだろうなと。スポーツに求められるものって、教育や地域の町おこしなど色々な部分。女子だけのチームではなくて、男子・女子関係なく、多様性を求められている中でコラボレーションしていけたらいいだろうなと思うんですけどね」

Q、最後に本田さんの直近の目標を。
「ウズベキスタンの女子サッカーに日本の指導者が行ったことで良かったよね、というスタートを切りたい。ウズベキスタンの女子選手たちがもう少しサッカー選手を続けていけるような環境を作ってあげたいと思うし、まずはオリンピック予選にチャンレンジする事が一番大きな目標です」