３年前の西日本豪雨の被災を乗り越え、吹奏楽に情熱を傾ける女子高生が倉敷市真備町にいます。高校３年になった彼女が高校生活最後の演奏会で伝えたのは、「音楽の力」でした。

全日本吹奏楽コンクールの全国大会でも金賞６回の名門、岡山学芸館高校の定期演奏会です。 観客からの応援は拍手と手拍子だけ、感染対策を取りながら開かれました。

このステージに特別な思いで立ったのが３年生の上田芽依さん（１８）です。

（上田芽依さん）
「きょうは私の吹奏楽人生最後の日感謝の気持ちも含めた最高のステージにしたい」 （西日本豪雨発生当時　アナウンサーリポート）

上田さんの自宅は、西日本豪雨で水につかりました。通っていた中学校も被災し、上田さんが部長を務めていた吹奏楽部は練習場所を失いました。 （上田芽依さん）＊２０１８年撮影
「一生懸命頑張ったのにこんな形で部活が終わるのは残念」 そんな上田さんたちを助けたのは、音楽でつながる仲間です。隣町の中学校が練習場所の教室を貸してくれました。 諦めかけていた中学校生活最後の県大会に出場する事ができたのです。 （上田芽依さん）＊２０１８年撮影
「色んな人に支えられたので恩返ししたい」 上田さんは猛勉強して受験に合格し、名門吹奏楽部の一員となりました。

（上田芽依さん）
「被災した時に支えてくれた人たちに元気になってもらえるような演奏をしたい」

しかし彼女を待っていたのは、更なる試練でした。

新型コロナウイルスの感染拡大で、演奏会やコンクールは軒並み中止。生徒たちのためにと何とか開催されたこの演奏会で、上田さんは思いの全てを伝えます。

＊芽依ちゃん演奏（♪ありがとう♪） 【避難先から真備町までバスで通学した日々】 【被災地の中学校と一緒に初めてマーチングに挑戦】 【自宅のリフォームを待ちながら受験勉強】 【卒業式】 【新型コロナで思うような演奏が出来ない】 （上田芽依さん）
「演奏旅行もなくなって、練習時間も限られてくる中で、どれだけ密な練習ができるかだったが、一日一日を大切にして練習に取り組めたと思う」 （中川重則顧問）
「３年生部員を紹介したい、定期演奏会を持ちまして引退となります」 （上田芽依さん）
「人を元気づけられる力があるところに惹かれた少しでも音楽の楽しさを伝えられる人間になりたい」 誰よりも音楽の力を信じた上田さん。その演奏は、彼女を支えた人だけでなく、コロナ禍の困難に立ち向かう多くの人にも、届いたに違いありません。