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これからもこの町で 新たな生活がスタート

2021.06.10

これからもこの町で 新たな生活がスタート

倉敷市真備町の畑で、赤く実ったイチゴを手ににっこりほほ笑む女性がいました。
吉永紀子さん(74歳)。
西日本豪雨で被災した後、町外のみなし仮設住宅で暮らしてきました。

この畑には車で毎日のように通ってきたといいます。
吉永さんは、この春、町内に完成した災害公営住宅に入居し、
念願の真備町に戻ってきたのです。
家の中には新しい家具が運ばれ、台所には吉永さんが育てた野菜も並び、
落ち着いた日常が戻ってきたように見えました。

しかし、吉永さんは「今でも、あの日を思い出すと涙がこぼれてしまう」と。
一人暮らしの吉永さんを心配し、独立した子どもたちからは、
別の場所での生活再建を勧められましたが、
吉永さんは、40年以上暮らしたこの町にこだわりました。
気心の知れた近所の人たちと他愛もない世間話をすることを何より楽しみにしているのです。

新しい生活が始まって約3カ月。畑仕事をする吉永さんは、
日が暮れるまで野菜の世話に打ち込んでいます。
散歩する地元の人たちが声を掛けてくれたり、時には、
吉永さんが野菜のおすそ分けをして、会話が弾むこともあるそうです。

吉永さんは涙を拭きながら言いました。「いつまでも泣いてばかりはいられない」

つらい記憶を乗り越え、大好きなこの町で前を向いて歩み続けます。

執筆:竹下 美保(OHK報道部)
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