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手話が語る福祉~接触による意思疎通が欠かせない…コロナ禍の盲ろう者の現状~

2021.03.09

手話が語る福祉~接触による意思疎通が欠かせない…コロナ禍の盲ろう者の現状~

目と耳が不自由な盲ろう者にとって、人と触れ合うことは大切なコミュニケーション手段の1つです。
人との接触を避けるコロナ禍で直面する盲ろう者の現状と、彼らを支える取り組みを取材しました。

(指点字 やり取り)
「ど・ら・や・き」
「(こしあん?粒あん?)粒あんですよ」
「つ・ぶ・あ・ん」

相手の指を点字タイプライターに見立て、打つことで意思を伝える「指点字」。

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一方、手話を手で触って読み取る「触手話」です。

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(触手話 やり取り)
「ロールケーキだけでいいですか?」
「いいよ」

どちらも、目も耳も不自由な盲ろう者が使うコミュニケーション手段ですが、共通しているのは手が触れること。

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新型コロナウイルスの影響で、接触を避ける行動が求められる中、人との接触は盲ろう者にとって大切な意思疎通の手段です。

(篠田吉央キャスター)
「新型コロナウイルスが感染拡大する中、通訳・介助員に期待することは何ですか?」

(岡山・矢掛町在住の盲ろう者 青江英子さん(67))
「情報不足なので情報が欲しいです。通訳・介助員に手伝ってもらって、色んな所に連れて行ってもらいたい」

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(岡山市在住の盲ろう者 浅井義弘さん(79))
「家の中では一人で動けるけど、外ではどうにもならない。同行援護を利用しようと思っても、(感染防止を考え)我慢している」

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コロナ禍で通訳・介助員の派遣件数は激減 盲ろう者の行動に暗い影

岡山県内の2020年度の通訳・介助員の派遣件数は、前の年の約3分の1に減り、コロナ禍は2012年の時点で、全国に約1万4000人いる盲ろう者の行動に暗い影を落としています。
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(東京大学 先端科学技術研究センター 福島智教授)
「実際に手を触れ合わす、通訳・介助員が自宅に来ないと、その盲ろう者は孤立してしまう。テレビも見られないし、スマホも使えないし、だんだんと現実世界から離れていくような感じだろうと思う」
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こう話すのは、自身も盲ろう者で、バリアフリーの研究を専門にする東京大学の福島智教授です。

(東京大学 先端科学技術研究センター 福島智教授)
「障害者や高齢者が心豊かに生きられるということは、それ以外の人も心豊かに生きられるということであって、どんな状態になっても自分は取り残されないんだ、生きていけるんだと思って安心していれば、この社会はすごく居心地が良くなっていくだろうなと思っています」

誰一人 取り残さないために…盲ろう者を支える取り組みとは

誰一人 取り残さないために。
盲ろう者を支える取り組みが岡山県津山市で進んでいます。

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(篠田吉央キャスター)
「こちらでは、盲ろう者のための通訳や手引きの勉強会が開かれています」

岡山県北の通訳・介助員不足を解消しようと、県などが企画したもので、参加者は2年かけ盲ろう者の通訳と介助を学びます。

(通訳・介助員養成講座に参加する大道智美さん(40))
「盲ろう者は、一人では外出ができないので、たくさん通訳・介助員がいれば手伝いができると思う」

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参加者の一人、大道智美さんは、聴覚障害者をサポートする手話通訳者の資格を持っています。
しかし、盲ろう者は、触手話や指点字など、人によってコミュニケーション手段が違うため、大道さんは指点字での通訳にも挑戦しています。

(盲ろう者と大道さんのやりとり)
「(指点字で)数字打って」
「30・・・9」
「39?」

また、介助は一人一人の障害の程度や、必要とされる支援内容を見極め、的確に対応する必要があります。

(岡山市在住の盲ろう者 浅井義弘さん)
「エスカレーターに乗る時は手前で立ち止まって、(手を前に出し)エスカレーターと合図して、手すりを持たせて欲しい」

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この日行われたのは、外に出ての介助研修。
普段の生活と同じように、盲ろう者と買い物などに出かけます。
お茶を買うために商業施設を訪れますが、店頭に並ぶ真空パックの茶葉に盲ろう者の男性は驚いた様子です。

(岡山市在住の盲ろう者 浅井義弘さん)
「これ固い」

(大道さん指点字で説明)
「はっ・ぱ。あ・け・た・ら・ば・ら・ば・ら」

お茶の種類や金額などを伝えますが、最終的に購入するまでに約30分かかりました。
どこに何があるのかわからない盲ろう者に、状況を伝えるのも重要な役目です。

(大道さん触手話と指点字を使い説明)
「2階は、ふ・く」

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エスカレーターに乗る際の合図も無事出せました。

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最後は食事です。
数あるメニューの中から、見聞きできない盲ろう者にいかに私達と同じように選ぶ楽しみを感じてもらえるか。
うどんを食べるその表情に、コロナ禍でも当たり前のことが当たり前にできる喜びが浮かびます。

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(岡山市在住の盲ろう者 浅井義弘さん)
「自分の身内を介助しているような態度で、きょう接してくれたと思う。それを忘れないで欲しい」

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(通訳・介助員養成講座に参加する大道智美さん)
「人と人と触れ合う中で、楽しみやストレスをなくすなど、生活の張りができたらいい」

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コロナ禍で避けられがちな人との接触。
しかし、盲ろう者を孤立から救えるのは触れ合う手のぬくもりだけです。

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(篠田吉央キャスター)
「つながる 大切さを 感じました」