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35日間で来場者の感染1人…“コロナ禍で挑むアートイベント 瀬戸内国際芸術祭の新たなカタチ(1)

2022.06.03

35日間で来場者の感染1人…“コロナ禍で挑むアートイベント 瀬戸内国際芸術祭の新たなカタチ(1)

港にある奇抜なカボチャや漂流郵便局を知っていますか。どちらも瀬戸内の島で楽しめる現代アートです。
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2022年、瀬戸内の島々で3年に1度の現代アートの祭典、瀬戸内国際芸術祭2022が開かれています。春、夏、秋の3つの会期があり、春会期は4月14日開幕し5月18日に閉幕しました。
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2019年の前回は過去最多の約118万人が訪れ、地域経済の活性化につながりましたが、コロナ禍での開催となった今回はどんなスタートを切ったのでしょうか。感染対策や来場者の状況、8月から始まる夏会期の見通しについて、取材を担当した記者が3回シリーズでお伝えします。
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瀬戸大橋を望める香川県坂出市の沙弥島(しゃみじま)。万葉歌人、柿本人麻呂が歌を詠んだとされる歴史あるこの島では、宇宙飛行士の奇抜なオブジェが展示されました。
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のどかな雰囲気とのアンバランスさが新鮮で、訪れた女性は「コロナ禍で暗くなることが多いがアートを見て楽しめた」と満足していました。
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2010年に始まった瀬戸内国際芸術祭、略して瀬戸芸。香川県と岡山県の12の島と高松港、宇野港を舞台に33の国と地域から184組のアーティストが214の現代アートを展開します。港のカボチャは直島、漂流郵便局は粟島の作品です。

2019年の前回は、直前にアメリカのニューヨーク・タイムズが「芸術と自然が調和する場所」として瀬戸内の島々を紹介したこともあり大いににぎわいました。

ただ今回はコロナ禍での初めての開催。小さな診療所しかなく医療体制が脆弱な過疎の島に多くの人が押し寄せて感染が拡大したらどうするのか。島民からは懸念の声が上がりました。
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そこで瀬戸芸実行委員会の会長、香川県の浜田恵造知事は対策を打ち出します。

来場者が島に渡る前に検温や体調確認を徹底しリストバンドを配って管理すること。入場制限をかけること。開催地域で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出た場合、中止を含めて検討することなど。

こうした対策により瀬戸芸を開催しても1日当たりの新規感染者は最大1人から2人の増加で抑えられるとする試算も発表しました。
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来場者は対策を守ってくれるのか。やはり不安な声が上がり続けます。開幕後、港などでは検温や体調確認に協力する来場者の姿がありました。

来場者からは「瀬戸芸のスタッフは大変だろうけど対策により安心して見ることができる」「島の人の迷惑にならないで済めばいい」との声も。結果的に春会期の35日間で感染が判明した来場者はわずかに1人だけ。屋外作品が多く密になりにくいことも功を奏しました。

春会期を終え浜田知事は「問題が生じずまずは良かった。安全安心が最も重要でより多くの人が安心できる瀬戸芸にしたい」と話しています。感染が拡大するという事態は避けられ一安心。来場者の理解も広がり、ウィズコロナ時代のアートイベントの形を示したと言えそうです。

(報告 OHK岡山放送 前川裕喜)