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ハサミを握れなくてもみんなを笑顔に…39歳で難病ALSと診断 理容師・父として【岡山・倉敷市】

2021.08.31

ハサミを握れなくてもみんなを笑顔に…39歳で難病ALSと診断 理容師・父として【岡山・倉敷市】

ALSと戦う男性28再
全身の筋肉が衰えていく難病、ALSと闘う男性が倉敷市にいます。周りの人を笑顔にしたいと前向きに振る舞う彼を支えているのもまた家族や周囲の人たちでした。

(食事の様子)
「トマト食べる?」
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右手は1年ほど前から動きません。直樹さん、42歳。何とか動く左手を使ってゆっくりと食事をします。
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(直樹さん)
「周りの目が気になりだして。口に運んでもらうのはまだ抵抗がある感じ」
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(妻・弥佳さん)
「結構詰まったりもするので、詰まりにくいものを色んな人に聞いて。離乳食の後期みたいな」
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直樹さんは、今から3年前、39歳の時に指定難病・ALSと診断されました。
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(直樹さん)
「もう曲がらない。無理に動かそうとしたら痙攣して力がうまく入らない」

ALS、筋萎縮性側索硬化症。脳の命令がうまく伝わらなくなり、運動神経が障害され、全身の筋肉が次第に動かなくなる原因不明の病気です。
発症後3年から5年で自発呼吸ができなくなり、やがて、死に至ります。有効な治療法はありません。
直樹さんが最初に感じたのは右手の違和感でした。

(直樹さん)
「(右手が)握手する時とか痛くて。あるとき、握手の相手の人に力が入っていないと言われたのが最初。腱鞘炎(けんしょうえん)かなと思った」
ALSと戦う男性09
ALSは60歳以降に発症することが多く、国内の患者数は約1万人、岡山県内では約160人がこの難病と闘っています。
診断を受けた時、直樹さんによぎったのは周りの人の顔でした。

(直樹さん)
「だいぶ恐ろしい病気で、その日1日へこんだ」「自分のことよりこの先の家族だったり、自営でやっている店とか、自分が抜けたらどうなるか」
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(店の様子)
倉敷市にある理容室、5年前、直樹さんが夫婦で立ち上げた店です。
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理容師として10年以上歩んできた直樹さんですが、その命とも言える「ハサミ」はもう握れません。
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(直樹さん)
「100%悔しい」
「いまだにできることを想像して、たまに動かないことを忘れて、ちょっと貸してとやるが、結局無理」

2020年までオーナー兼店長だった直樹さん。病気が進行し、副店長に店長を引き継ぐと共に大切なハサミを託しました。
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(Healing 岡田健志店長)
「(引き継いだハサミを)ずっと使っていこうと思います。オーナーの分まで頑張ろうと思って」
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(直樹さん)
「泣いてきていいですか」

現在も店には顔を出していますが、最近は、店に立つ時間に比べ、車で休憩する時間が増えてきました。
(直樹さん)
「お店で立っていると疲れてくるので、口数が少なくなって、お客さんが心配する。」
ALSと戦う男性18(直樹さん)
「お客さんとしゃべるというのが1番自分の役割。声を1人ずつかけて、また笑顔で来てもらえるように常に心掛けている。自分の仕事だなと思っている」
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直樹さんの息子、樹くんと、颯くんです。
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長男の樹くんが生まれたのは、直樹さんがALSと診断された頃でした。

(長男・樹くんが靴下をはかせる様子)
病気が進行し、できないことが増える父親とは対照的に、樹くんは、できることが増えてきました。
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(長男・樹くん)
「(パパのどこが好き?)ここ」
(直樹さん)
「元気もらえますね」

日々成長する我が子の姿が、時に折れそうになる直樹さんの心を支えています。

(直樹さん)
「なるべく諦めない自分を見せて、やりかた次第でこういうこともできると伝えたい」
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(妻・弥佳さん)
「私がずっと支えているから、いくらでも長生きしてほしいなと思っている」
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支えてくれる家族の存在…。難病と向き合う中でその大切さに改めて気づかされました。
(直樹さん)
「(家族との時間は)病気になる前よりだいぶ貴重な時間」「まわりのみんなが笑っていられる環境を続けることで、自分の体もひょっとしたらよくなるかも」
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 (長男・樹くん)
「パパ、大丈夫?」ALSと戦う男性28再
 
「周りのみんなが笑っていられる環境を」。直樹さんは、きょうも前を向いてALSと闘います。自分も周りに支えられながら…。